悲痛な表情で治療院に入ってこられるのが印象的な五十肩。
そのつらさは継続的に続く痛みはもちろんのこと、そんな休む間もなく続く痛みによって、気が休まらない・眠れない・治らないのではないか・との不安で日常生活に支障をきたすことにもあります。
急に痛みが出始めて、ちょっと痛い時期が少し続いた後見る見るうちに腕が動かせないほど痛みが激しくなって行く…驚くほど“あっ”という間に。
あとは、
□ 肩が挙がらない。痛みで少しでも動かせない。
□ ちょっと上にある物を取ることができない。
□ お風呂で身体を洗うのが大変だ。
□ 寝返りや着替えもままならない。
□ 疼きや痛みで夜も満足に眠れない。眠っても痛みで目が覚める。
□ じっとしていても痛い。ある一定の姿勢でないと痛む。
こんなときに、最初に疑わなければいけないことは肩周りの組織の損傷ですね。 肩こりなどであれば、状態が良かったり悪かったりと症状に変化がありますが、単純に、骨折・腱板断裂・変形等、損傷が原因である場合は痛みが間断なく続きます。
これは決して見逃してはいけないものです。
まず、整形外科などでしっかりとした検査をされることをお勧めします。特に腱板断裂などは処置が遅くなればなるほど治療が難しくなる傾向があるためです。
しかし、病院でレントゲンやCT、MRI など、様々な検査のあと画像所見に異常なし・・・。それらしい原因が見つからない。(もちろんこの時に骨棘や腱板断裂など異常が見つかる時もあります。)それでも間断なく続くいたみがおさまらなかったら・・・。
ドクターからは、 「五十肩ですね。ヒアルロン酸や痛み止めの注射とリハビリで様子を見ましょう。」といわれることが多いようです。(これで収まれば申し分ありませんが…。)
正確には <肩関節周囲炎> の病名で呼ばれるものですが、世間一般では <五十肩> のほうが良く使われている呼び方ですね・・・50代に多い傾向があるといわれているからでしょうか。
40代の方は「四十肩」、50代の方は「五十肩」とそれぞれアレンジして申告される方が多いです。
でもここで大事なのは、五十肩というのは様々な検査をしても原因が分からない肩関節周辺の可動域不全、それに伴う断続的な疼痛があるということです。
では、どうして痛みが出るのでしょうか?
肩周りの関節は、身体の中でも最も大きく動かすことの出来る場所です。そのためにたくさんの組織が広い範囲にわたって複雑に組み合わさっています。
そんな多くの筋肉や腱などの組織の内の一つが何らかの原因で炎症を起こしたとしましょう。でも、すぐに痛みは出ません。痛みが出ないように、周りの筋・腱が補助をしてくれるからです。多くはその補助が効いているうちに治癒していきます。
しかし、私達が仕事など様々な使い方を強いる上で、周りの筋・腱の補助だけでは治癒が追いつかない場面が出てきます。
するとどうなるのか?
その補助をしている周りの筋・腱も限界に近づいていきます。本来ある仕事に加えて補助と言う仕事が増えているわけですから・・・オーバーワークですね。
・・・でも、今度もそのまた周りの筋・腱が補助をかってでてくれます。
痛みが出ないように・・・。生活に支障が出ないように・・・。
そんな状態に私達が気付く事は難しいですね。痛みがないわけですから。痛みが出ないように身体が頑張ってくれているのです。
しかしその間にも肩周りの状態はどんどん悪化し、ますます肩全体に広がっていきます・・・。
この頃になると、痛み等は気にならないまでも違和感が出始めます。
肩の前部や上部、肩甲骨の内側などに、ツッパリ感や疼き感、稼働域の減少(動きが悪い)などが観られるようになります。この様にしっかりと身体からの“五十肩の前触れサイン”が出ているはずなのです。
この時期に気が付いてしっかりとケア出来れば問題は無いのですが、気が付いたり、気にしたりする方は決して多くありません。
私の診てきた経験上ではありますが、多くの方に共通しているのが、仕事や家事、スポーツをバリバリされている方。ちょっと痛くなっても 「じきに治るだろう」 とほって放っていた方。五十肩なんて、まさか自分がこんな目にあうとは思ってもみなかった・・・そんな自分の身体に自身を持っていた方々が多いようです。
そんな状況にも限界が来ます。
肩周りの状況は、痛みは無いまでもどの部分もかなり緊張が高まっている状態・・・。何とか普段の使い方であればしのげている状態といえばいいでしょうか。
そこにちょっとだけ無理をしたり、普段と違う事や動きをしたりすることがきっかけで、肩周りの緊張の均衡が“ドミノ倒し”のように一気に崩れて“みるみるうちに痛みが広がっていく”状態になっていきます。
・・・文字通り“あっ”という間です・・。
しかしこの五十肩の痛みの全てが、炎症が原因とは云えません。炎症だけでは説明がつかないところも多いのです。
痛みと状態は変わっていきます。
五十肩といっても痛みにも種類がありますし、状態にも段階があります。
大まかに・・。
◇初期:炎症や腫れがどんどん広がっている状態。 (何をしても痛い。)
どんどん状況が悪くなっていく“五十肩初期”の時点では、かなりの範囲で炎症が見られます。熱を持っていますし、腫れがひどい場合が多いです。
この時の痛みは炎症や腫れからくる痛みが大部分を占めている状態ですから、常に痛みを感じる(のたうちまわる様に痛い)状態です。
◇中期:炎症の範囲は少なくなっているが、それまでの痛みによる慢性的な筋緊張が起こり、痛みから逃れる術として反射的な運動制限を起こす。
(ある一定の姿勢だと痛みが楽になる。それ以外は痛いので動けない。)
ゆるりの様な治療院に患者さんが来られるのが早い方でこの時点。
広範囲の腫れを伴った方は少ないのです。・・・そう、時間が経っています。
病院などで検査やリハビリを経ているので仕方ないのですが・・・。しかし来られた時点でも痛みは相当なものです。でも炎症や腫れなどが大きな原因ではなくなってきているようで、痛い時と比較的ましな時との差が生まれ始めます。
◇安定期:動かすと痛い状態ですが炎症が大きな原因ではなくなっています。
“動かない”のではなくて何かが邪魔をして“動かせない”状態です。
この頃になると、初期ののたうちまわる様な痛みも収まり、痛みの質も変わってきます。常に痛いわけではなく、ある一定の動きに対して強い痛みを覚えます。その繰り返される痛みによって身体全体の緊張感も否応なしにあがって行きます。
先に示した、
□ 肩が挙がらない。痛みで少しでも動かせない。
□ ちょっと上にある物を取ることができない。
□ お風呂で身体を洗うのが大変だ。
□ 寝返りや着替えもままならない。
□ 疼きや痛みで夜も満足に眠れない。眠っても痛みで目が覚める。
・・・等の関節や筋肉の運動制限が大きな問題になるのがこの時期です。
病院などでのリハビリで思ったような効果が感じられずに手詰まり感が出る事も多いと思います。
どうして痛みが続くのでしょう。
肩を動かすためには腕の筋肉をはじめ、胸・首・背中・腰など、広い範囲の筋肉を使いますね。肩を含めた、そのすべてがスムーズに連携することで自由に違和感なく動かすことができます。
しかし、初期に肩の広範囲にできた炎症によって生まれた筋緊張の痛みによる運動制限は、治ろうとする周りの正常な組織や筋肉に大きな負担を与えていきます(“何かが邪魔をして”はこのこと)。
お互いに連携していることが逆に、良くなろうとする処にさらに負担を強いて、さらに強い筋肉の緊張を引き起こしていくのです・・・。
継続的に、しかも互いに、“足を引っ張ってしまう”イメージですね。
それは、肩の内部間でも起こりますし、隣接する 胸・首・背中・腰などの広い範囲でも起こります。・・・だから五十肩(肩関節周囲炎)は長引く傾向が強くなるのです。
病院でも、「3ヶ月から半年かかりますよ。長くなればもっと…。」といわれ、治療(リハビリ)に通うものの思ったような効果が感じられず、しかも「こんな状態が3ヶ月から半年もつづくのか?・・・」と、慌てて治療院を探し始める方が多くなるのです。・・・こんな過程のどれかに当てはまっている方は注意してください!
ゆるり治療院で出来ることは・・。
身体の中で最も複雑で、動く範囲の広い関節だからこそ起こりうる特殊な痛みです。
五十肩の治療はまさに、「丸く絡んでしまった毛糸の玉を解く」作業の様なものです。
・・・・一本だけを引っ張るとどんどん絡んでいってしまいます。ですから、いろんな方向から、周りの状態を診ながら、少しずつ解いていく作業が必要になります。
そんな作業(五十肩の治療)には鍼灸治療が最適です!
肩周りを支える胸・首・背中・腰等の状態を整えて緊張の取れやすい状態を作ることは勿論のこと、複雑に緊張が組み合った筋肉を“丁寧に、丁寧に”解していきます。
痛みのある所だけではなく、緊張の激しい部分や、強張りのある部分などを同時に広範囲に治療していくことで、“待つこと”よりも遥かに早い回復が見込めるのです。
患者さんの中には一度の治療で回復される方もおられます。
痛みの出始める・・できるだけ早い時期に、鍼灸をメインとした治療と関節の可動域を広げていくストレッチを併用したリハビリを始めることを強くお勧めします!